アレルギー性鼻炎の患者数

2019年に行われた日本耳鼻咽喉科学会の医師及びその家族を対象とした全国調査では

  1. アレルギー性鼻炎全体 49.2%(1998年29.8%,2008年39.4%)
  2. 花粉症全体 42.5%(1998年19.6%,2008年29.8%)
  3. 通年性アレルギー性鼻炎24.5%(1998年18.7%,2008年23.4%)

このように徐々に増加傾向にある国民病ともいえる疾患です.

アレルギー性鼻炎の症状

くしゃみ,鼻水,鼻詰まり

がアレルギー性鼻炎の3症状です.これらの症状により睡眠障害や集中力の低下などの労働生産性の低下が引き起こされるといわれています.

2019年第一生命経済研究所の研究ではで2019年1〜3月の間で花粉症により外出を控えたことによる家計消費が5691億円低下したと試算されています.

2020円パナソニックが行った調査では1日あたり2215億円の経済的損失を起こしていると推計されています.

そのためアレルギー性鼻炎は治療や対策を行うことが有用なのです.

アレルギー性鼻炎の原因

一年中症状があるような通年性アレルギー性鼻炎の原因となりやすいのは,ダニ,カビ,ガ,ペット(イヌやネコなど)などです.

季節性アレルギー性鼻炎の原因となるのは,スギやヒノキが有名ですがイネ科花粉(カモガヤ,オオアワガエリ)やキク科花粉(ブタクサ,ヨモギ),ハンノキ,シラカンバなどもあげられます.

最も多く行われている検査は採血検査です.当院では個別に調べること以外に主要アレルゲン39項目を調べるView39アレルギー検査を行っております.

アレルギー性鼻炎の治療方法

大原則として原因となるアレルゲンを特定して,そのアレルゲンを避けるのが第一の治療となります.

しかし,それだけでは不十分な場合には以下のような治療が行われます.

抗ヒスタミン剤

現在は眠気や口の渇きなどの症状が出にくい第二世代抗ヒスタミン剤が医療機関で処方されるものの主体となっております.副作用が強いほど効果も強いわけではありません.服用回数や眠気の強さ,服用するタイミングなどライフスタイルにあったものを選択していくことが大切です.

長い期間使用しているからといって耐性がつくことはないのでご安心ください.

ロイコトリエン受容体拮抗剤

アレルギー性鼻炎のガイドラインで鼻詰まりが主体の方に効果が高いとして推奨されている薬です.眠気はほぼ出ないため,眠気が気になる鼻詰まりがつよい方にはよい薬です.ただし鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎といった構造的な異常を伴う鼻詰まりの方には効果が乏しいです.CTやファイバースコープ,鼻腔通気度での精密検査を行ったことがない場合には一度行うことをおすすめしております.

好酸球性副鼻腔炎の方には効果が高いため,主軸として処方する薬の一つです.

こちらも長い期間使用しているからといって耐性がつくことはないのでご安心ください.

鼻噴霧ステロイド薬

全身へ吸収されることが少なく,鼻粘膜の局所で非常に良く炎症を抑えてくれる治療薬です.ステロイドと聞くと心配される方もいますが,小児でも長期使用しても成長抑制などは非常に少ないことがわかっております.

アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)

アレルギー性鼻炎の原因となっているアレルゲンを毎日取り込むことで,身体をアレルゲンに慣れさせる治療です.非常に有効性が高く2年間でダニに対しては80%のひとが,スギに対しては70%の人が症状が改善したというデータがあります.

3年間継続した場合,中断してもその後5年間は効果が持続すると言われておりますが最終的に投与前の体質に戻ってしまいます.可能な限り継続していくのが望ましいとされております.

スギ花粉症に対する抗IgE抗体注射治療

2020年よりこれまでの治療法で効果が見られず「最重症」の方を対象として抗IgE抗体を医療機関で皮下注射する治療が認可されました.適応を満たした方においては良い治療ですが,コストが高い治療であるためよく説明させていただいた上で導入をしております.

手術療法

鼻詰まりが構造的な問題で起こっている患者に対しては,ガイドラインでも手術治療が推奨されております.鼻中隔弯曲症の方であれば,鼻中隔矯正術(内視鏡下鼻腔手術1型)や肥厚性鼻炎の方であれば粘膜下下鼻甲介骨切除術(内視鏡下鼻腔手術1型)を行っております.一方で鼻汁量やくしゃみ発作が重篤で十分な薬物治療でも効果が乏しい場合には経鼻腔翼突管神経切除術といった手術も有効性があるとされております.手術の内容についてはこちらを参照ください.