副鼻腔の役割

副鼻腔は蜂の巣状に小さな部屋が集まった空間であり,加湿などの役割を担っております.

鼻は正常でも一日あたり1〜1.5リットルの鼻汁をつくってます.副鼻腔と鼻腔を繋ぐ自然孔という部分が炎症でむくんでしまうと,膿が溜まったり,ポリープができ,炎症が悪化する悪循環になってしまいます.

左図:ポリープを伴う副鼻腔炎(篩骨洞優位の炎症)

右図:わずかに左上顎洞の粘膜肥厚を認めるのみのほぼ正常な患者

慢性副鼻腔炎に悩む患者さんの数

日本で200〜300万人の方が慢性副鼻腔炎で悩んでいるといわれております.

副鼻腔炎の症状

  1. どろりとした鼻汁(さらさらしている場合もあります)
  2. 頭痛,顔面痛といった痛み
  3. 鼻詰まり
  4. 後鼻漏(鼻から喉に垂れこんでくる)による咳

などがあります.

近年増えている再発性の高い(繰り返しやすい)副鼻腔炎では

徐々に匂いがわかりにくくなる嗅覚障害を伴うことがあります.

副鼻腔炎の種類

  1. 風邪をひいた後に症状が出ている急性副鼻腔炎
  2. 3ヶ月以上症状が続いている慢性副鼻腔炎

に分けることができます.

慢性副鼻腔炎の多くは,両鼻に症状があります.片鼻のみに症状がある片側性副鼻腔炎もあります.

片側性副鼻腔炎

①上顎側の虫歯から起こる歯性副鼻腔炎

②カビが引き起こす真菌性副鼻腔炎

③良性腫瘍(乳頭腫など)や悪性(いわゆる癌)による随伴した副鼻腔炎

があります.

これらの疾患を疑う場合,当院ではMRI撮影ができないため,治療経過の中でMRIを撮影していただくために他院に足を運んでいただくことがあります.

好酸球性副鼻腔炎という近年増加している副鼻腔炎は非常に再発性が高い(繰り返しやすい)ため,長期間に及ぶ薬物治療と経過観察が必要となります.

副鼻腔炎の治療

薬物治療と手術治療があります.

薬物治療

ポリープができていない副鼻腔炎で有効です.クラリスロマイシンなどのマクロライド系とよばれるお薬を3ヶ月間使用します.抗菌薬として使用する量より少量の投与となるため,少量マクロライド内服療法とよばれます.この治療は反復して行うことができるため,手術希望がない場合には複数回にわたってこの治療を行うこともあります.この治療法は日本発で世界的に効果が認められており,約60%の方に効果があると報告されております.

ステロイド噴霧薬による点鼻治療,自宅での鼻洗浄も有効性が高いといわれております.

手術治療

前述の薬物治療で症状が残存した場合,ポリープが多くあるために薬物治療の効果が乏しいと考えられる場合には,手術治療が推奨されております.

以前は口から切開して行う手術がありましたが,現在は内視鏡を用いて行う内視鏡下副鼻腔手術が主流となっておりますので,外から見える場所に切開を加えることはありません.当院も全例内視鏡による手術方法で行なっております.詳しくはこちらをご参照下さい.

左図:慢性副鼻腔炎でポリープと膿汁で充満した副鼻腔

右図:内視鏡下副鼻腔手術を受けた後の同一患者の副鼻腔

抗体製剤による治療

再発を繰り返す好酸球性副鼻腔炎の方に対しては,2020年3月より抗IL-4/13抗体 デュピルマブ (商品名 デュピクセント®)を皮下注射する方法が認可されました.

非常に良い治療ですが費用面などふくめて気軽に行える治療ではありません.適応になる患者さんに対してはしっかりと説明させていただいた上で導入を行っております.

副鼻腔炎の再発率

2015年に福井大学の藤枝教授らが発表されたJESREC studyでは次のようなデータが出ております.

非好酸球性副鼻腔炎は12.7%の再発率,3.3%の難治率

好酸球性副鼻腔炎軽症は23.4%の再発率,11.7%の難治率

好酸球性副鼻腔炎中等症は31.1%の再発率,16.6%の難治率

好酸球性副鼻腔炎重症は51.8%の再発率,29.4%の難治率

これらのデータをもとに当院では非好酸球性副鼻腔炎の方でも2年間

好酸球性副鼻腔炎の方は可能な限り永続的な経過観察を行っております.