耳のトラブルで一番最初におもいつくのはこれではないでしょうか?

音が聞こえないというのは,「コミュニケーション障害」を引き起こします.しゃべっていても,度々聞き返したりするのはすごく辛いものです.

生返事をしたり,とりあえずニコニコして聞いている人

聞こえないから,怒り出す人

人それぞれ反応はありますが,みなさん非常に困っていらっしゃいます.

聞こえの悪さは3つの種類に分けられます.

(山形県立中央病院耳鼻咽喉科 二井一則先生による)

1)音の伝わりが悪い場合…外耳の問題

鼓膜が分厚くなる、耳の穴が骨で狭くなるなどがあります。

また以前に受けた手術の後遺症として,鼓膜が浅くなる方もいます。

これらは補聴器でもある程度効果はあります.

しかし外耳のトラブルは,根本的にはどれも手術で修正可能です。

2)音の伝わりが悪い場合…中耳の問題

鼓膜に穴が開いている場合

音を伝える骨(アンプの役割をする耳小骨)が硬い場合

が考えられます.

穴が開いている鼓膜のまま,補聴器をつけてしまうと

①耳だれが頻繁に出て,補聴器を壊してしまう.

②補聴器の効果が十分に得られない.

このような事態を引き起こします.

また慢性中耳炎を放置した場合、兵庫医科大学教授の阪上先生が2001年に発表した論文でも、正常耳よりも約5倍早く聴力が悪化することがわかっています。

そのため、穴が空いて湿る慢性中耳炎の耳を乾いた安全な耳にすべきです.

つまり,手術で穴を塞ぐことが当院では原則的な方針としております。

中耳のトラブルに関しても手術で改善できるものが多いです.

3)神経レベルで聞こえが悪い場合…内耳〜脳の中枢の問題

このレベルの聴覚低下は,手術で治すのが難しい場所です.

基本的に補聴器により補います.

補聴器は大変有用ですが,値段が高ければよく聞こえるわけではありません.

値段が高いものは様々な機能がついていますが,それと補聴器の調整は別物です.

また両耳ともまったく聞こえが悪くなった場合には人工内耳手術で聴力を取り戻せる可能性があります.

耳鼻咽喉科 院長 中上桂吾