6/4に見学の先生がきてくれました.
川崎市立川崎病院(慶應義塾大学耳鼻咽喉科所属) 中山梨絵先生です.
院長が,慶應義塾大学外鼻副鼻腔解剖実習コースをお手伝いさせていただいているご縁で,今回見学にきてくれました.
鼻中隔の手術について
耳鼻咽喉科も手術を行う,外科学の一分野です.
医療は日進月歩で進歩を続けていきます.なので最新の知見をアップデートしつづけないといわゆる「古い治療」を行う側になってしまいます.
今回行った手術内容は,「Hemitransfixtion approachによる前弯矯正(論文は飯村慈朗先生が2018年に発表されたもの)]です.
2007年に慶應義塾大学耳鼻咽喉科(現 所沢市 齊藤耳鼻咽喉科)の齊藤秀行先生が「Cottle法による鼻中隔矯正術」として頭頸部外科に発表されました.
2011年院長が慈恵医大本院に入局した際には,鼻班の大櫛哲史先生が主に行っていらっしゃいました.2014年に太田総合病院へ異動した際に,前部長である飯村慈朗先生(現 東京歯科大学市川総合病院耳鼻咽喉科 教授)よりこの術式をご指導いただきました.
飯村先生は鼻中隔手術分野の第一人者で,耳鼻咽喉科総会や鼻科学会総会でご講演をされます.また多くの論文を書かれており,多くの医師が参考にしております.
飯村先生に多くの鼻中隔手術を指導いただいておかげで,前任地の東京女子医科大学東医療センターで形成外科の中尾先生と共に外鼻および鼻中隔手術をチームを組んで共に行うことができました.
鼻科学会でも鼻中隔の分野は,外鼻の範囲も交えて考えなければいけないため現在もHotな分野となっております.
鼻中隔の手術は簡単か?
鼻中隔手術は耳鼻科医1年目からやる病院も多いかもしれません.
ただし術式選択を間違うと,患者さんへもたらす不利益は多大なものとなります.
そして,再度手術で修正しようとする場合大掛かりなものになりかねません.
我々耳鼻科にいらっしゃる患者さんたちは「鼻閉」「鼻詰まり」で困っております.
外見上の修正を希望されない場合には,かなりの部分を鼻内単独で修正ができます.
そのため,鼻中隔手術は鼻科医にとっては非常にhotな分野ですし,難しい手術の一つです.耳科学と同じ再建外科であるため,どのような形に作り直すかが大事であるからです.
だが一方で鼻を専門にしていない先生からは「鼻中隔手術は簡単な手術」で終わってしまいます.そのため若手の先生であっても,なかなか新しい術式は学ぶ機会が少ないものとなってしまいます.
学ぶために最も優れた方法は人に教えることである
この言葉は,東京女子医科大学東医療センター教授の須納瀬弘先生が師と仰がれているイタリアのグルッポロトジコ マリオサンナ先生と共著された「中耳手術アトラス(Middle Ear and Mastoid Microsurgery)」の1ページ目に書かれた言葉です.
向上心のある先生は,有名な先生のところに学びに行くという選択肢があります.
僕自身も様々な著名な先生のところで手術見学をさせていただきました.
新しい知見を学ぶことで患者さんにその成果を還元できるからです.
中山先生が今後手術する患者さんに今回の手術内容がきっと活かされると思います.
そして僕自身にとっても技術を伝えることで自分の知識が整理され,当院で手術を受けられる患者さんによりよい結果を提供できると思います.
改めて「学ぶために最も優れた方法は人に教えることである」という言葉の深さを感じました.
7月・8月も手術見学にいらっしゃる先生が複数おります.
医師にとって,みて学ぶということはとても大事なものです.
みなさまご協力のほどよろしくお願いいたします.