日本医科大学多摩永山病院 耳鼻咽喉科部長 細矢慶先生が施設と手術の見学にきてくれました.

手術に関するディスカッションも多く行え,大変有意義な時間を過ごすことができました.

見学に来ていただいた日の症例は,局所麻酔の手術でした.

局所麻酔での鼻手術

鼻の手術は,現在ほとんどが全身麻酔で行われています.

日本で最も鼻の手術をしている大学病院での例です.(研修会での資料より)

年間症例数全身麻酔局所麻酔
19852502%98%
19903005%95%
200040046%54%
200963095%5%

すこし古いデータなので,現在はもっと全身麻酔の比率が多いかもしれません.

しかしほんの20年前くらいまでは半分は局所麻酔で行われていました.

つまり

鼻の手術は局所麻酔で十分可能である

ということです.全身麻酔と比べて優れているところやわるいところがあります.

局所麻酔の優れているところ

全身状態の回復が早い

呼吸器の合併症の影響を受けにくい

術中の出血が少ない

術中の副損傷を起こしにくい

局所麻酔の弱いところ

3時間以上の手術では麻酔が弱まってしまう

極度の怖がりや不安が強すぎる人は向かない

手術中は定期的にお話ししながら状態をチェックする必要がある

この優れているところである「呼吸器の合併症」が現在多い副鼻腔疾患と非常に関連しております.

近年多い好酸球性副鼻腔炎と併存疾患

1990年ごろから副鼻腔炎のタイプが変化してきました.それまで手術をしたら治癒していた副鼻腔炎が,手術をしても再発をするものが出てきました.

2001年に獨協医大春名教授が「好酸球性副鼻腔炎」の概念を発表され,2015年には全国調査が行われました.

副鼻腔炎の人は、日本に100万人から200万人いると言われています。

そのうち鼻茸が存在するような慢性副鼻腔炎患者が20万人います。

好酸球性副鼻腔炎の中等症・重症の人は、約2万人と言われています。

好酸球性副鼻腔炎の特徴は,成人発症の「気管支喘息」と「嗅覚障害」を起こすことです.

また「鎮痛剤によって気管支喘息の発作」を起こしやすいといった特徴があります.

このような人の中には,肺に管を入れるような刺激が気管支喘息の発作を起こすため,全身麻酔で受けにくい方がいます.

局所麻酔で安全にしっかりとした手術ができる施設もある

局所麻酔でのトレーニングを積む機会はなくなっているため,局所麻酔で手術をできる施設は限られています.

気管支喘息の小さな発作が続いており,全身麻酔が受けられない方も局所麻酔であれば受けられる可能性があります.

当院はさらに麻酔科医の副院長が術中管理をおこなうため,意識をすこしぼんやりした状態で血圧や痛みの管理をしっかりした手術が受けることができます.